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2026.10.21 犬・猫の皮下点滴を自宅で行うには?準備から針の刺し方、失敗したときの対応まで解説

「自宅で点滴をすることになったけれど、うまく針を刺せるか不安」
「点滴中に動いたり、逃げたりしたらどうしよう」
「点滴後のふくらみが消えないけれど、様子を見ても大丈夫?」

初めて犬や猫に自宅で皮下点滴を行う際は、このような不安を感じる飼い主様も多いのではないでしょうか。

皮下点滴は、慢性腎臓病や末期がん、脱水などの治療や体調管理を目的として行われます。ただし、必要な輸液量や実施頻度は犬・猫の状態によって異なるため、獣医師の指示を受けたうえで行うことが大切です。

今回は、自宅で皮下点滴を行う際の準備や手順、失敗しやすいポイント、受診が必要な症状について解説します。

■目次
1.自宅で行う皮下点滴とは?
2.自宅での皮下点滴が必要になる主なケース
3.自宅で皮下点滴を行うために必要な道具
4.自宅で行う皮下点滴の手順
5.失敗しやすいポイントと受診の目安
6.まとめ

 

自宅で行う皮下点滴とは?

皮下点滴とは、犬や猫の皮膚を持ち上げ、皮膚の下にある皮下組織へ輸液剤を注入する方法です。皮下に入った水分は、時間をかけて少しずつ体内へ吸収されます。

静脈点滴は、血管内に輸液剤を入れるため、一般的に動物病院で管理しながら行います。一方、皮下点滴は静脈点滴よりもゆっくり吸収される方法であり、獣医師から指導を受けることで自宅でも継続できる場合があります。

通院回数を減らせるため、移動が負担になりやすい犬や猫のストレスを軽減しながら、水分補給を続けられる点が特徴です。ただし、状態によっては皮下点滴ではなく、入院下での静脈点滴が必要になります。

 

自宅での皮下点滴が必要になる主なケース

自宅での皮下点滴は、主に次のような犬や猫に提案されることがあります。

・慢性腎臓病により尿量が増え、脱水しやすい
・末期がんなどの病気があり、継続的な水分補給が必要
・食欲や飲水量が低下している
・自力で十分な量の水を飲めない
・通院による負担を抑えながら治療を続けたい

犬や猫の食欲低下の原因や受診の目安についてより詳しく知りたい方はこちら

特に慢性腎臓病の猫では、病状に応じて定期的な皮下点滴が必要になる場合があります。

一方、心臓病がある犬や猫などでは、過剰な輸液が心臓や肺に負担をかける可能性があります。輸液剤の種類・1回量・頻度を自己判断で変更せず、動物病院から指示された内容を守りましょう。

 

自宅で皮下点滴を行うために必要な道具

自宅での皮下点滴には、一般的に以下の道具を使用します。

・動物病院から処方された輸液パック
・輸液セット
・翼状針などの指定された針
・消毒綿
・使用済みの針を入れる容器
・必要に応じてタオルや猫用の保定チョッキ

alt="犬・猫の皮下点滴に使用する輸液パック、輸液セット、翼状針、注射針、消毒綿"

【輸液パック・輸液セット・翼状針・消毒綿の写真】

 

開始前には、輸液剤の変色や濁り、異物、パックの破損がないかを確認します。使用期限が過ぎたものや異常があるものは使わず、動物病院へご相談ください。

また、針先や輸液セットの接続部分には触れないようにします。一度使用した針を再利用すると、痛みや感染の原因になるため、毎回新しい針に交換しましょう。

輸液剤の保管方法や温め方は製品によって異なります。自己判断で電子レンジや熱湯を使用せず、処方時の説明に従ってください。

 

自宅で行う皮下点滴の手順

皮下点滴を始める前に、犬や猫が落ち着ける場所を選びましょう。滑りにくいマットを敷き、輸液パックを犬や猫より高い位置に掛けておくと、点滴を進めやすくなります。


【皮下点滴の手順動画】

 

①輸液セットを準備する

手を洗い、輸液パックと輸液セットを接続します。液量をチェックし、点滴筒に輸液剤をためた後、チューブ内を輸液剤で満たして空気を抜き、最後に新しい針を取り付けます。

操作方法は使用する器具によって異なるため、初回は動物病院で実物を使った説明を受けてください。

 

②犬や猫の体を支える

刺したい場所を消毒します。リラックスできる姿勢を取らせ、背中や肩甲骨周辺の皮膚をつまみ上げます。嫌がる場合は無理に押さえつけず、ご家族に支えてもらったり、タオルでやさしく包んだりすると行いやすくなります。

 

③皮下へ針を刺す

つまみ上げた皮膚でテントのような三角形を作り、その根元付近へ針を刺します。刺す位置や針先を向ける方向は、針穴を上にして並行よりやや下に向けて刺しましょう。

針が皮膚を突き抜けると、反対側から輸液剤が漏れることがあります。その場合は、慌てずに落ち着いてすぐに滴下を止め、針を抜きます。再開する場合は新しい針に交換してください。どの程度の量が入ったか分からないときは、自己判断で最初からやり直さず、動物病院へ確認しましょう。

 

④滴下を確認する

クレンメを上まで上げて、点滴筒内で輸液剤が滴下していることを確認します。流れにくいときは、針先が皮下に入っていない、皮膚や組織に当たっている、チューブが折れているなどの可能性があります。

針や皮膚の位置をわずかに調整しても改善しない場合は、無理に続けず、いったん中止しましょう。

 

⑤終了後に針を抜く

指示された量まで入ったら滴下を止め、滴下していないことを確認してから針を抜きます。刺した部分を消毒綿などで軽く押さえ、液漏れや出血がないか確認してください。

少量の出血がみられた場合は、清潔なガーゼや消毒綿で数分間圧迫します。使用済みの針は家庭ごみに入れず、動物病院から案内された方法で保管・返却しましょう。

 

失敗しやすいポイントと受診の目安

自宅での皮下点滴では、慣れるまで針が抜けたり、輸液剤が漏れたりすることがあります。思うようにできなくても、飼い主様ご自身を責める必要はありません。

 

<針が抜けた・液が漏れた場合>

当院でもよく伺うのが、針が皮膚を貫通して輸液剤が漏れた、犬や猫が急に動いて針が抜けたというケースです。

すぐに滴下を止め、抜けた針を再び刺さず、新しい針へ交換してください。どの程度入ったか分からない場合は、自己判断で不足分を追加せず、当院へご相談ください。

 

<点滴中に暴れる・逃げる場合>

タオルで体を包む、猫用の保定チョッキを使用する、ご家族に支えてもらうといった方法があります。食事をとりながらであれば、落ち着いて受けられる犬や猫もいます。

それでも強く嫌がる場合は、けがや点滴への苦手意識につながる可能性があるため、無理に続けないようにしましょう。

 

<点滴後のふくらみが移動した場合>

点滴後は、輸液剤が入った部分に柔らかいふくらみができます。輸液剤が皮下を移動して、首や胸、脇、前足付近まで下がってくることもあります。

当院では、輸液剤が脇や首へ移動したことで、座りにくそうにする、香箱座りをしなくなる、動き始めに鳴くなどの様子がみられるケースも確認しています。呼吸の異常やぐったりした様子、強い痛みなどがなく、ふくらみが徐々に小さくなっている場合は、焦って揉まずに様子を見て構いません。

一方、呼吸が速い・苦しそう、元気がない、ふくらみが大きくなっているなどの異変がある場合は、速やかに動物病院へご連絡ください。

 

<皮膚をつまみにくい>

重度の脱水では皮膚を持ち上げにくく、針が反対側まで貫通しやすくなることがあります。

当院では、必要に応じて背中の毛を一部刈り、皮膚や針の位置を確認しやすくする方法をご提案しています。ご自宅で無理に毛を刈らず、ご相談ください。

 

まとめ

犬や猫の自宅での皮下点滴は、慢性腎臓病や末期がん、脱水などの治療を継続するための選択肢のひとつです。慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、針が抜ける、輸液剤が漏れるといった失敗は珍しいことではありません。

当院では、初めて自宅で皮下点滴を行う飼い主様に、器具の準備から保定方法、針の刺し方、終了後の処置までご説明しています。開始後も体調や脱水の程度を定期的に確認し、必要に応じて輸液量や頻度を見直したうえで、輸液セットを処方します。

「うまくできない」「このふくらみは様子を見てよいのか分からない」といった場合も、お気軽にご相談ください。犬や猫と飼い主様の負担を考えながら、ご家庭で続けやすい方法を一緒に検討していきます。

 

監修:米田 昂史(院長・獣医師)

 

米田 昂史(院長・獣医師)

<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。

<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから

<ひとこと>
言葉を話せない動物たちそれぞれの個性を大切にし、飼い主様と相談しながら最善の治療を提案いたします。「気軽に立ち寄れる動物病院」であり続けるために、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。

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