2026.09.07 犬や猫が突然痙攣したら?てんかん発作の見分け方と受診の目安
「愛犬が突然倒れて、手足をバタバタさせた」
「体が硬直して呼びかけても反応しない」
「発作は治まったけれど、このまま様子を見てもよいのだろうか」
犬や猫の痙攣(けいれん)やてんかん発作を初めて目にすると、驚いてしまう飼い主様も多いのではないでしょうか。
発作は短時間で治まる場合もありますが、繰り返したり長時間続いたりすると、緊急性が高くなるケースがあります。また、発作が治まって普段どおりに見えても、原因を調べるために動物病院での診察が必要です。
今回は、犬や猫に痙攣・てんかん発作が起きた際の対処法や受診の目安、動物病院で行う検査、繰り返す発作への備えについて解説します。

■目次
1.痙攣・てんかん発作とは|「震え」とどう見分ける?
2.発作が起きたときの対処法|動画と時間を記録する
3.すぐに受診したい痙攣・発作のサイン
4.発作を繰り返す場合は「てんかん」の可能性も
5.動物病院ではどのような検査をする?
6.繰り返す発作に備える|ご自宅で使用する緊急薬について
7.まとめ
痙攣・てんかん発作とは|「震え」とどう見分ける?
犬や猫の体が小刻みに動いていると、痙攣なのか単なる震えなのか、判断に迷う場合があります。
寒さや緊張、恐怖などによる震えでは、一般的に意識が保たれており、名前を呼ぶと反応したり、自分で歩いたりできる場合があります。
一方、てんかん発作では、突然倒れて手足を突っ張る、全身を激しく動かす、意識を失うといった症状が表れる場合があります。よだれや失禁を伴うケースもあり、発作後にはぼんやりしたり、ふらついたりする犬や猫もいます。
ただし、発作の表れ方はさまざまです。全身に症状が表れるとは限らず、顔や手足など体の一部だけが繰り返し動く場合もあります。
そのため、見た目だけで震えと発作を判断するのは難しいケースがあります。
犬や猫に震えが生じたときに考えられる病気についてより詳しく知りたい方はこちら
発作が起きたときの対処法|動画と時間を記録する
犬や猫に突然発作が起きたときは、慌てて体を押さえ込んだり、口の中に手を入れたりせず、まず周囲の安全を確保しましょう。
家具や階段だけでなく、床や壁などにぶつかって頭を打つ可能性もあるため、周囲の物を移動させ、必要に応じてタオルなどで体をやさしく包み、衝撃から守ります。ただし、顔を覆ったり、動きを強く抑えたりしないよう注意してください。
そのうえで、可能であれば次の情報を記録してください。
・発作が始まった時刻と治まった時刻
・呼びかけに反応するか
・全身または体の一部がどのように動いているか
・発作中や発作後に普段と異なる声や呼吸音などがないか
・発作後にふらつきやぼんやりした様子がないか
特に重要なのが、発作の動画撮影と時間計測です。
発作は動物病院に到着するまでに治まっているケースも少なくありません。そのため、当院でも診断するうえで、飼い主様が撮影した動画を重要な情報として確認しています。
ただし、撮影のために犬や猫へ近づきすぎる必要はありません。安全を確保したうえで、無理のない範囲で記録してください。
すぐに受診したい痙攣・発作のサイン
痙攣や発作が起きた際は「何分続いているか」「何回起きているか」を確認することが重要です。
発作が5分以上続く場合や、1日のうちに何回も繰り返す場合、発作が連続して意識や状態が十分に回復しない場合は緊急性が高いと考えられます。
また、発作は日中・夜間を問わず突然起こるため、発作が起きた時間帯に応じて、次のように対応しましょう。
<日中に発作が起きた場合>
かかりつけの動物病院へ連絡し、発作の持続時間や回数、現在の様子を伝えたうえで、速やかに受診してください。
短時間で治まり、その後いつもどおりに見える場合も、自己判断で様子を見続けず、受診のタイミングを相談しましょう。
<夜間に発作が起きた場合>
夜間救急動物病院へ連絡し、発作の持続時間や回数、現在の様子を伝えて、受診が必要か判断を仰ぎましょう。緊急性が高いと判断された場合は、指示に従って速やかに受診してください。
夜間の受診が不要と判断された場合も、翌日にはかかりつけの動物病院へ相談しましょう。
発作を繰り返す場合は「てんかん」の可能性も
痙攣や発作を繰り返す場合、原因のひとつとして、てんかんが考えられます。
てんかんは、脳の神経細胞の電気的な活動が一時的に乱れる「てんかん発作」を繰り返す脳の病気です。ただし、痙攣や発作を繰り返しているからといって、すべてがてんかんとは限りません。
血糖値や電解質の異常、腎臓、肝臓などの病気、中毒といった脳以外の異常によって発作が起こる場合もあります。さらに、脳炎や脳腫瘍など、脳そのものの病気が関係しているケースもあります。
そのため、発作が繰り返される場合は、発作を抑えるだけでなく原因を調べ、必要に応じて継続的に診療していくことが大切です。
動物病院ではどのような検査をする?
犬や猫の痙攣・てんかん発作では、発作の原因を絞り込むために段階的に検査を行います。
まずは問診で、発作が始まった年齢、回数、持続時間、発作中の様子、発作後の状態などを確認します。この際、飼い主様が撮影した動画や発作の記録が診断の手がかりになります。
次に、身体検査や神経学的検査を行い、意識や歩き方、神経の反応などを確認します。
その後、当院では血液検査を行い、低血糖や電解質異常など、代謝性の異常が発作に関係していないかを確認します。そのうえで脳に原因がある可能性を検討し、必要に応じてMRI検査などの画像検査へ進みます。MRI検査が必要と判断した場合には、対応可能な二次診療施設をご紹介します。
なお、MRI検査では検査中に体が動かないようにする必要があるため、一般的に全身麻酔をかけて実施します。
このように、痙攣や発作は症状だけで原因を決めるのではなく、問診や各種検査の結果を組み合わせて判断していきます。
繰り返す発作に備える|ご自宅で使用する緊急薬について
てんかんなどで発作を繰り返す犬や猫では、獣医師の判断により、発作時にご自宅で使用する緊急薬が処方される場合があります。
緊急薬には、鼻から噴霧で投与するタイプ、液体の薬を直腸内へ投与するタイプ、座薬(固形の薬)などがあります。どの薬を使用するかは犬や猫の状態によって異なります。
<鼻から噴霧で投与する場合>
獣医師から指示された薬を、専用の器具を使用して鼻腔内へ投与します。発作中に顔の正面から無理に近づくと危険な場合があるため、処方された際には投与方法を詳細に獣医師に尋ねましょう。
<液体の薬を直腸内へ投与する場合>
シリンジに入れられた薬剤を、肛門から直腸内へ投与します。発作中は犬や猫が激しく動く場合があるため、無理に押さえ込まないよう注意が必要です。
<座薬を使用する場合>
座薬は、肛門から入れて使用する固形の薬です。発作が起きた際に、獣医師から事前に指示されたタイミングで使用します。
緊急薬は、薬の種類や投与量、使用するタイミングを獣医師の指示に従うことが重要です。自己判断で薬を追加したり、別の犬や猫に処方された薬を使用したりしないでください。
発作が長時間続く場合や、緊急薬を使用しても発作が続く場合、短時間に何度も繰り返す場合には、速やかに動物病院へ連絡し、受診してください。
まとめ
犬や猫の痙攣・てんかん発作は、突然起こるため、飼い主様が落ち着いて対応するのは簡単ではありません。
発作が起きた際は、犬や猫の安全を確保しながら時間を計り、可能であれば動画を撮影してください。5分以上続く発作や1日のうちに何回も繰り返す発作は緊急性が高いため、速やかな受診が大切です。
一方、1回だけで治まり、その後元気に見える場合でも、翌日には動物病院を受診しましょう。発作を繰り返す場合には、てんかんだけでなく代謝性疾患や脳の病気なども考慮し、原因を調べる必要があります。
当院では、救急病院での診療経験を持つ院長が、発作の状況や検査結果を踏まえて緊急性を見極め、その後の継続的な診療まで対応しています。MRI検査など、より詳しい検査が必要な場合には二次診療施設とも連携しています。
愛犬や愛猫に発作が起きたあと「今は落ち着いているけれど受診したほうがよいのか」「発作を繰り返していて今後が心配」といった場合もご相談ください。
監修:米田 昂史(院長・獣医師)
米田 昂史(院長・獣医師)
<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。
<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから
<ひとこと>
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