2026.06.24 犬や猫の「食欲がない」は病気のサイン?|原因と受診の目安を獣医師が解説
「最近、ごはんを残すようになった」「急に食べなくなった」「好きなおやつしか食べない」といった様子が続くと、「体調が悪いのでは」と心配になる飼い主様もいらっしゃるかと思います。
犬や猫の食欲低下は、一時的な体調の変化による場合もあれば、病気のサインとして表れている場合もあります。特に梅雨時期は、気温や湿度の変化によって体調を崩しやすくなるため、「なんとなく食欲が落ちている」と感じるケースも少なくありません。
一方で、「少し様子を見ても大丈夫なのか」「早めに受診したほうがよいのか」の判断が難しい症状のひとつです。
そこで今回は、犬や猫の食欲がないときに考えられる原因や、ご自宅で確認したいポイント、受診の目安などについて解説します。

■目次
1.「食欲がない」とはどの程度?判断の目安
2.食欲がないときに考えられる主な原因
3.ご自宅で確認したいポイント
4.様子見でよいケースと早めに受診を検討したいサイン
5.受診時に伝えていただきたいポイント
6.当院での診察・検査の流れ
7.まとめ
「食欲がない」とはどの程度?判断の目安
「食欲がない」といっても、その状態はさまざまです。
たとえば、以下のように表れ方には違いがあります。
・まったく食事を口にしない
・いつもの半分程度しか食べない
・フードは食べないが、おやつだけ食べる
・食べたそうに近づくものの途中でやめてしまう
・好きだった食事への反応が鈍い
また、犬や猫では年齢や性格、活動量によって食事量に個体差があります。そのため、「これくらい食べていれば問題ない」と単純には判断できません。
大切なのは、“いつもと違う”という変化に気づくことです。特に、普段しっかり食べる犬や猫が急に食欲を落としている場合や、元気消失、嘔吐、下痢などほかの症状も伴っている場合には注意が必要です。
なお、猫は食事の好みが繊細で、一時的に食べムラが出る場合もあります。しかし、その背景に病気が隠れているケースもあるため、「ただの気分かな」と決めつけず、動物病院に相談することが大切です。
食欲がないときに考えられる主な原因
犬や猫の食欲が低下している時に考えられる原因としては、主に以下のものが挙げられます。
<消化器疾患が関係している場合>
比較的多い原因のひとつが、胃腸の不調です。
急なフード変更や食べ慣れないものの摂取、胃腸炎などによって、食欲低下が起こる場合があります。このようなケースでは、嘔吐や下痢を伴うことも少なくありません。
また、おもちゃや布などを飲み込んでしまった場合には、消化管閉塞を起こし、急激に体調が悪化することもあります。「食べない」「吐く」「元気がない」といった症状が重なっている場合は、早めの受診が重要です。
猫の嘔吐についてより詳しく知りたい方はこちら
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<発熱や感染症などによる全身状態の変化>
発熱や感染症によって、食欲が低下するケースもあります。
人でも熱が出ると食欲が落ちるように、犬や猫でも全身状態が悪化すると食事をとれなくなります。
特に子犬や子猫では、感染症によって短時間で状態が変化することもあるため注意が必要です。ぐったりしている、反応が鈍い、水も飲めないといった様子が見られる場合には、早めの対応が求められます。
<痛みが影響している場合>
犬や猫は、痛みを我慢しやすい動物です。
そのため、関節の痛みや腹痛、口の中の違和感などがあっても、大きく鳴いて訴えるとは限りません。
「食べたそうにするのに食べない」「食事の途中でやめる」といった変化として表れる場合もあります。
特にシニアの犬や猫では、関節炎など慢性的な痛みが背景にあるケースもあります。食欲低下だけでなく、動きたがらない、寝ている時間が増えたなどの変化もあわせて確認しましょう。
<内臓疾患(腎臓病や肝胆道系疾患など)が関係している場合>
犬や猫の食欲低下の背景には、内臓の病気が隠れている場合もあります。
特に猫では、慢性腎臓病の初期症状として「なんとなく食欲が落ちてきた」という変化が見られるケースがあります。
また、肝臓や胆のう、膵臓などの病気でも、食欲低下や元気消失が表れることがあります。初期には症状が目立ちにくいため、小さな変化を見逃さないことが大切です。
<口腔内トラブル>
歯周病や口内炎、歯の破折など、口のトラブルによって食欲が落ちるケースもあります。
特に猫の口内炎では、痛みが強く出ることもあり「食べたい気持ちはあるのに痛くて食べられない」という状態になる場合があります。
フードの前までは来るものの食べない、口を気にする、よだれが増える、食べるときに顔を傾けるなどの変化が見られる場合には、口の中でなにかしらのトラブルが起きている可能性があります。
犬や猫の歯周病・口腔トラブルについてより詳しく知りたい方はこちら
<腫瘍が原因となる場合>
食欲低下の背景に、腫瘍性疾患が関係しているケースもあります。
消化器にできた腫瘍によって食事がとりづらくなったり、全身状態の悪化によって徐々に食欲が低下したりすることがあります。
特にシニア期では、「年齢による衰えかな」と思われていた変化の背景に病気が見つかる場合もあります。
<当院で実際に見られたケース>
実際に当院でも、「下痢が続いている」「食欲が落ちている」といった症状で来院される犬や猫は少なくありません。
また、「最近なんとなく食べる量が減ってきた」という変化をきっかけに検査を行った結果、重度の腎不全が見つかったケースもあります。
さらに、シニア期の犬や猫では、「以前より元気がない」「食欲が徐々に低下している」といった一見年齢による変化のように見える症状の背景に、腫瘍性疾患が隠れていたケースもあります。
なお、食欲低下の原因はひとつとは限りません。複数の要因が重なって症状が表れているケースもあるため、全身状態を総合的に確認しながら原因を探っていくことが大切です。
ご自宅で確認したいポイント
犬や猫の食欲が落ちているときは、食事量だけでなく全身の状態を確認しましょう。
特に以下のような点は重要な情報になります。
・水は飲めているか
・元気や反応はあるか
・嘔吐や下痢はあるか
・排便・排尿はできているか
・食欲低下はいつから始まったか
・フード変更や生活環境の変化はあったか
たとえば、引っ越しや来客、気温変化などのストレスが影響して、一時的に食欲が落ちる場合もあります。
一方で、水も飲めない、何度も吐く、ぐったりしているといった症状がある場合には早めに動物病院を受診することが大切です。
また、無理に食べさせようとする必要はありません。体調が悪い状態で強引に食事を与えることで、かえって吐いてしまったり、食事への苦手意識につながったりする場合もあります。
まずは落ち着いて様子を観察し、気になる点を記録しておくと、受診時にも役立ちます。
様子見でよいケースと早めに受診を検討したいサイン
食欲低下が見られても、すべてが緊急性の高い状態とは限りません。
たとえば、以下のような場合には、一時的な体調変化の可能性もあります。
<様子見でよいケース>
・元気があり、普段通り活動できている
・水分がしっかりとれている
・半日程度で食欲が戻る傾向が見られる
しかし、以下のような症状がある場合には、早めの受診をおすすめします。
<早めに受診を検討したいサイン>
・半日〜1日以上食べない状態が続いている
・嘔吐・下痢・発熱・ぐったりしているなどの症状がある
・水が飲めない
・排尿や排便に異常がある
・急激に体重が減っている
・子犬・子猫やシニアで食欲低下が見られる
特に子犬・子猫では、低血糖や脱水が短時間で進行することがあります。また、シニアでは慢性疾患が背景に隠れているケースも少なくありません。
「受診するほどではないかもしれない」と迷う場合でも、まずは相談していただくことで、早期発見につながる場合があります。
受診時に伝えていただきたいポイント
診察時には、以下のような内容をお伝えいただけると、原因の把握に役立ちます。
・いつから食欲が落ちたか
・どの程度食べられているか
・水は飲めているか
・嘔吐や下痢の有無
・普段と違う行動はあるか
・最近フードや生活環境が変わったか
また、可能であれば食べ残した量や嘔吐物、便の状態などを写真で記録しておくと、診察時の参考になります。
当院での診察・検査の流れ
当院では、まず問診を通して、生活環境や食事内容、症状の経過などを丁寧に確認しています。
そのうえで、身体検査を行い、体温や脱水状態、口腔内、腹部の張りなどを細かくチェックします。
さらに必要に応じて、以下の検査を実施し、食欲低下の原因を総合的に調べていきます。
・血液検査
・レントゲン検査
・エコー検査
なお、当院では救急病院での経験を活かし、軽い不調から重い病気まで幅広く対応しています。
また、高度な検査や専門的治療が必要と判断される場合には、二次診療施設とも連携し、その子に合った医療をご提案できる体制を整えています。
まとめ
犬や猫の「食欲がない」という症状は、一時的な体調変化から病気のサインまで、さまざまな原因で表れます。特に、嘔吐や下痢、元気消失などほかの症状も伴っている場合には、注意が必要です。
「もう少し様子を見ようか」と迷うこともあるかもしれません。しかし、“いつもと違う”という小さな変化に気づき、早めに相談することで、病気の早期発見につながるケースも少なくありません。
当院では、日常のちょっとした不安や気になる変化についても、飼い主様に寄り添いながら丁寧に診察しています。
「受診するほどか分からない」という段階でも構いません。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
監修:米田 昂史(院長・獣医師)
米田 昂史(院長・獣医師)
<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。
<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから
<ひとこと>
言葉を話せない動物たちそれぞれの個性を大切にし、飼い主様と相談しながら最善の治療を提案いたします。「気軽に立ち寄れる動物病院」であり続けるために、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
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