2026.08.18 犬や猫が急に歩けない・立てない・動けない|元救急医が教える原因と受診サイン
「朝起きたら、急に立てなくなっていた」
「さっきまで普通に歩いていたのに、突然動かなくなった」
「足を引きずっていて、どうしたらよいかわからない」
このような様子を目にすると、強い不安を感じる飼い主様も多いのではないでしょうか。
犬や猫が急に歩けない、立てない、動けない原因は、足のケガだけとは限りません。爪のトラブルや軽い外傷から、神経の病気、血管の異常、さらには命に関わる病気まで、さまざまな原因が考えられます。
見た目だけでは原因を判断することは難しく、「少し様子を見ても大丈夫だろう」と考えている間に病状が進行してしまうケースもあります。
今回は、犬や猫が急に歩けなくなったときに確認したいポイントや考えられる原因、早めの受診が必要なサインについて解説します。

■目次
1.まずは落ち着いて確認を|受診前に見ておきたいチェックポイント
2.犬や猫が急に歩けなくなる原因はさまざま|比較的よく見られるケース
3.ヘルニアや神経の病気が隠れていることも
4.実は命に関わる病気が隠れていることも|救急診療で見られるケース
5.こんな症状があればすぐに動物病院へ|緊急受診のサイン
6.当院での対応|救急経験を活かした初期判断と二次診療施設との連携
7.まとめ
まずは落ち着いて確認を|受診前に見ておきたいチェックポイント
犬や猫が急に歩けなくなった場合は、慌てて無理に歩かせるのではなく、まずは落ち着いて状態を確認しましょう。
特に以下のような点は、原因を考えるうえで重要な手がかりになります。
・片足だけに異常が見られるか、両足に見られるか
・意識ははっきりしていて、呼びかけに反応するのか
・体や足を触ったときに強く痛がる様子がないか
・出血や腫れ、爪のケガ、足裏の傷など目で見てわかる異常がないか
・呼吸が荒い、苦しそうにしているなど全身状態に変化がないか
これらを確認したあとは、安全な場所で安静にさせてください。
無理に歩かせたり、痛そうな足を何度も動かしたり、自己判断でマッサージしたりすると、症状が悪化する場合があるため控えましょう。
犬や猫が急に歩けなくなる原因はさまざま|比較的よく見られるケース
犬や猫が急に歩けなくなる原因はひとつではありません。比較的軽い外傷もあれば、早急な治療が必要になる病気もあります。
比較的よく見られる原因として、まず挙げられるのが外傷です。
例えば、当院でも爪が折れたり、足裏に異物が刺さったり、足裏のできものが痛んだりしたことが原因で、急に足を着けなくなった犬や猫を診察することがあります。
また、猫では、伸びすぎた爪が肉球に刺さり、突然歩けなくなったように見えるケースも少なくありません。
さらに、高い場所から飛び降りたり、滑って転倒したりしたことがきっかけで、捻挫や脱臼、骨折が起こることもあります。股関節脱臼などの整形外科疾患では、痛みのために立てなくなる場合があります。
見た目だけでは原因を区別できないケースも多いため「少し足を痛めただけだろう」と自己判断せず、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
ヘルニアや神経の病気が隠れていることも
歩けない原因は、神経や血管などの異常が関係している場合もあります。
代表的な病気として、以下のようなものが挙げられます。
<椎間板ヘルニア>
主に犬に多く見られる病気です。特にミニチュア・ダックスフンドやフレンチ・ブルドッグ、ウェルシュ・コーギーなどは発症しやすい犬種として知られています。
突然後ろ足に力が入らなくなったり、立ち上がれなくなったりすることがあります。進行すると、自力で歩くことが難しくなる場合もあります。
<血栓症>
主に猫に多く見られ、緊急性の高い疾患のひとつです。
後ろ足へ向かう血流が急激に悪くなることで、突然後ろ足が動かなくなることがあります。強い痛みが表れたり、後ろ足が冷たく感じられたりすることも特徴です。
このほかにも、脳や末梢神経の病気などが原因で、歩けなくなるケースがあります。
これらの病気の中には、治療を始めるまでの時間がその後の経過に影響するものもあります。そのため、急に立てない、歩けない症状が表れた場合は、できるだけ早く動物病院で診察を受けることが大切です。
実は命に関わる病気が隠れていることも|救急診療で見られるケース
「歩けない」という症状から、足のケガを想像される飼い主様は多いかもしれません。しかし実際には、足以外の病気が原因で動けなくなっているケースもあります。
例えば、以下のような病気や異常によって全身状態が急激に悪化すると、立ち上がれなくなったり、ぐったりして動けなくなったりすることがあります。
・内臓の病気
・腫瘍
・感染症
・重度の貧血
・心臓の病気
実際に、急に動かなくなったという症状で来院した犬を詳しく検査したところ、脾臓腫瘍が見つかったケースもありました。
特に脾臓腫瘍が破裂すると、お腹の中で大量に出血し、突然ぐったりしたり、立てなくなったりする場合があります。
このように、歩けない原因が足のケガや関節の異常だけとは限らず、内臓の病気や全身の異常が関係しているケースも少なくありません。
そのため、歩けない原因を足だけに限定せず、全身の状態も含めて評価することが重要です。
こんな症状があればすぐに動物病院へ|緊急受診のサイン
以下のような症状が見られる場合は、できるだけ早く動物病院へご相談ください。
・完全に立てない、歩けない状態になっている
・短時間で症状が悪化している
・強く痛がっている
・呼吸が荒い、苦しそうにしている
・意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い
・ぐったりして食事や水分を受け付けない
犬や猫の呼吸の異常と循環器疾患についてより詳しく知りたい方はこちら
このような症状は、早急な対応が必要な病気が隠れているサインである可能性があります。
受診の際は無理に歩かせず、キャリーやタオルなどを利用して体を支えながら、安全に移動させましょう。
なお「救急で受診するべきか迷う」という場合も、自己判断で様子を見るより、まずは動物病院へ電話で相談することが大切です。
当院での対応|救急経験を活かした初期判断と二次診療施設との連携
当院では、救急病院での診療経験を活かし、まずは緊急性の有無を判断しながら診察を進めています。
歩けない原因は外傷から神経疾患、全身の病気まで幅広いため、身体検査や神経学的検査などを行い、どこに異常があるのかを丁寧に確認します。
爪のケガや足裏のできもの、異物による外傷のほか、腫瘍や血管系の異常が疑われるケースについても、状態を評価し、必要な初期対応を行っています。
一方で、椎間板ヘルニアや整形外科疾患など、より専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、二次診療施設と連携し、その子の状態に応じた医療をご提案しています。
原因がはっきりわからない段階でも、まず現在の状態を確認し、今後の対応方針をご説明します。
「急に歩けなくなったけれど、どこが悪いのかわからない」という場合も、お早めにご相談ください。
まとめ
犬や猫が急に歩けない、立てない、動けない原因は、爪のトラブルやケガのような外傷だけでなく、神経疾患や血管の異常、内臓の病気、腫瘍など幅広く考えられます。
中には、早めの対応がその後の経過に影響する病気や、命に関わる病気が隠れている場合もあります。そのため「様子を見ても大丈夫だろう」と自己判断せず、できるだけ早く動物病院で診察を受けることが大切です。
特に、立てない、呼吸が苦しそう、意識がはっきりしない、強い痛みがあるなどの症状は、緊急性が高く、速やかな対応が必要なサインです。
当院では、救急病院での経験を活かして緊急性を見極めるとともに、必要に応じて二次診療施設とも連携しながら、その子の状態に応じた治療方針をご提案しています。犬や猫が急に歩けない、立てない、動けない様子が見られた際は、お電話のうえ、お早めにご相談ください。
監修:米田 昂史(院長・獣医師)
米田 昂史(院長・獣医師)
<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。
<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから
<ひとこと>
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