2026.06.26 犬や猫のしこりに気づいたら|腫瘍の種類・症状・診断方法を獣医師が解説
愛犬や愛猫の体を撫でているときに、「あれ?こんなところにしこりがあったかな」と気づき、不安になった経験はありませんか?
特に、「がんだったらどうしよう」「すぐに悪化してしまうのでは」と心配になる飼い主様は多くいらっしゃいます。
しかし、犬や猫にできるしこりにはさまざまな種類があり、すべてが悪性腫瘍(がん)というわけではありません。脂肪のかたまりのような良性腫瘍もあれば、炎症による腫れがしこりのように感じられる場合もあります。
一方で、見た目や触った感触だけで良性・悪性を判断するのは難しく、「様子を見てよい状態なのか」をご家庭で見極めるのは簡単ではありません。そのため、早めに動物病院で状態を確認し、必要に応じて検査を進めていくことが大切です。
今回は、犬や猫で見られる代表的な腫瘍の種類や症状、診断方法、治療方針について解説します。

■目次
1.腫瘍とは?|良性と悪性の違い
2.犬や猫に見られる腫瘍の種類
3.腫瘍が疑われるサイン|見逃したくない症状
4.診断方法
5.治療方法
6.マーズペットクリニックでのがん診療|相談しやすい体制づくり
7.まとめ
腫瘍とは?|良性と悪性の違い
まず、「腫瘍」とは、細胞が異常に増え続けることでできる病変の総称です。一般的には「しこり」と表現される場合が多く、皮膚に表れるものもあれば、体の内部に発生するものもあります。
また、腫瘍は、大きく「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(がん)」に分けられます。
良性腫瘍は比較的ゆっくり大きくなり、周囲との境目がわかりやすい傾向があります。一方で、悪性腫瘍は増殖スピードが速かったり、周囲の組織へ入り込んだり、別の臓器へ転移したりする可能性があります。
ただし、見た目だけで良性・悪性を判断できないケースも多く、小さなしこりでも注意が必要な場合があります。
犬や猫に見られる腫瘍の種類
犬や猫で比較的よく見られる腫瘍には、以下のようなものがあります。
<脂肪腫>
脂肪細胞が増えてできる良性腫瘍です。やわらかく、皮膚の下で動くように触れるケースが多く、中高齢の犬でよく見られます。
<肥満細胞腫>
犬で多く見られる皮膚の悪性腫瘍の一つです。見た目がさまざまで、軽い炎症のように見える場合もあります。一方で、悪性度によって進行の仕方が異なるため、早めの診断が重要です。
<乳腺腫瘍>
乳腺にできる腫瘍で、特に未避妊の中高齢のメス犬・メス猫で見られます。犬では良性・悪性がほぼ50%ずつですが、猫ではほとんどが悪性とされています。
<リンパ腫>
リンパ球という免疫細胞が、腫瘍化する悪性腫瘍です。体表のリンパ節(あごの下、脇の下、膝の裏など)が腫れたり、食欲低下や元気消失など全身症状として表れたりする場合があります。
<メラノーマ>
色素を作る細胞が腫瘍化する悪性腫瘍です。口の中や爪の周囲、皮膚などに発生することがあり、進行するとリンパ節や肺へ転移する場合もあります。黒いしこりとして見られることが多いものの、色の薄いタイプもあるため、見た目だけで判断することはできません。

なお、同じ腫瘍でも、発生する部位によって症状や治療方針が変わる場合があります。そのため、「小さいから安心」とは一概には言えません。
腫瘍が疑われるサイン|見逃したくない症状
腫瘍は、初期の段階では目立った症状が出にくい場合があります。そのため、日常のスキンシップやブラッシング中に偶然気づくケースも少なくありません。
特に、以下のような変化が見られる場合は注意が必要です。
・しこりが徐々に大きくなっている
・硬さや形が変わってきた
・赤みや出血、ただれがある
・同じ場所を気にして舐めたり掻いたりしている
・元気がない
・食欲が落ちている
・体重が減ってきた
・呼吸が荒い、咳が増えた
また、体の内部にできる腫瘍では、外からしこりを確認できない場合もあります。そのため、「最近なんとなく元気がない」「以前より痩せてきた」「お腹が大きくなってきた(張ってきた)」といった変化が重要なサインになるケースもあります。
一方で、「もう少し様子を見てもよいのか迷う」という場面もあるかと思います。しかし、早めに確認することで、治療の選択肢が広がる可能性があります。そのため、不安な変化がある場合は、無理に自己判断せず動物病院に相談しましょう。
診断方法
腫瘍の診断では、まず飼い主様から詳しくお話を伺います。
たとえば、「いつ頃からあったのか」「急に大きくなったのか」「食欲や元気に変化はあるか」といった情報は、診断の大切な手がかりになります。
そのうえで、触診を行い、しこりの大きさや硬さ、動き方などを確認します。また、リンパ節の状態や全身の健康状態もあわせてチェックします。
こうした診察は、今後どのような検査が必要か方向性を見極める重要なステップです。
さらに必要に応じて、段階的に以下の検査を進めていきます。
<細胞診>
細い針を使って細胞を採取し、顕微鏡で確認する検査です。比較的負担が少なく、全身麻酔をせずに実施できることもあり初期評価として行われる場合が多くあります。
なお、リンパ腫や肥満細胞腫などの腫瘍は、この検査によって診断できる場合があります。
<画像検査(レントゲン・エコー・CT検査)>
体の内部に腫瘍がないか確認したり、周囲への広がりを調べたりするために行います。また、肺や腹部臓器への影響を確認する際にも重要です。
さらに、腫瘍の位置や広がりをより詳しく評価する必要がある場合には、CT検査を実施することがあります。CT検査は体の断面を立体的に確認できるため、腫瘍の大きさや周囲の組織との関係、転移の有無などをより詳細に把握するのに役立ちます。
ただし、CT検査では撮影中に動かないようにする必要があるため、多くの場合で全身麻酔が必要です。当院ではCT検査設備は備えておりませんが、必要と判断した場合には連携する高度医療施設をご紹介し、より詳しい検査を受けていただくことが可能です。

<生検(組織検査)>
組織の一部、あるいは腫瘍全体を採取し、詳しく調べる検査です。細胞診では診断が難しい場合や、より正確な診断が必要な場合に実施されます。
基本的に全身麻酔が必要となりますが、腫瘍の種類や悪性度、周囲への広がりなどを詳しく評価できるため、確定診断につながる重要な検査です。
また、良性腫瘍では検査を兼ねて腫瘍全体を切除することで、そのまま治療が完了する場合もあります。
このように、複数の検査を組み合わせながら、腫瘍の種類や進行度、全身状態を総合的に判断していきます。
治療方法
治療方法は、腫瘍の種類や進行度だけでなく、年齢や持病、生活環境などによっても変わります。
そのため、「すべての犬や猫に同じ治療を行う」というわけではありません。体への負担や生活の質も考慮しながら、その子に合った方法を検討していきます。
代表的な腫瘍では、以下のような治療が選択されます。
<脂肪腫>
生活に支障がなく、急に大きくなる様子がなければ、定期的に大きさや形の変化を確認しながら経過観察を行う場合があります。一方で、しこりが大きくなって歩きにくさにつながったり、日常生活でこすれて炎症を起こしたりする場合には、外科手術で摘出を検討します。
<肥満細胞腫>
外科手術によって腫瘍を取り除く治療が基本となるケースが多くあります。肥満細胞腫は見た目だけでは悪性度を判断しにくいため、検査結果をもとに、手術の範囲や追加治療の必要性を検討します。悪性度が高い場合や転移が疑われる場合には、抗がん剤治療や分子標的薬などを組み合わせる場合もあります。
<乳腺腫瘍>
犬の場合、腫瘍の大きさや数、発生している範囲に応じて、外科手術で摘出する方法が検討されます。猫の場合、基本的な治療方法は乳腺の全摘出になります。手術後は、病理検査の結果をもとに再発や転移のリスクを確認し、必要に応じて追加治療や定期的な経過観察を行います。
<リンパ腫>
全身に関わる悪性腫瘍のため、外科手術で取り除く治療ではなく、抗がん剤治療を中心に進める場合が多くあります。治療では、腫瘍の進行を抑えながら、食欲や元気など生活の質を保つことを目指します。犬や猫の体調、年齢、通院の負担なども踏まえ、飼い主様と相談しながら治療方針を決定します。
また、飼い主様によって「積極的な治療を希望したい」「まずは負担の少ない方法を考えたい」など、希望される方向性は異なります。
そのため当院では、検査結果や治療の選択肢について丁寧にご説明し、飼い主様と相談しながら無理のない治療方針を一緒に考えていきます。
マーズペットクリニックでのがん診療|相談しやすい体制づくり
当院では、鎌倉市・藤沢市を中心に、地域に根付いた獣医療を提供しています。
「しこりがある気がする」「様子を見るべきか迷っている」といった段階でも、気軽にご相談いただける環境づくりを大切にしています。
また、当院には腫瘍科診療に関する知識と経験を積み、腫瘍科認定医Ⅱ種の資格を持つ獣医師が在籍しています。しこりの性質を見極めるためにどのような検査が必要なのか、どこまで検査を進めるべきなのかについても、飼い主様のお気持ちに配慮しながら、できるだけ分かりやすくご説明いたします。
さらに、診察や検査の結果を踏まえながら、必要に応じて二次診療施設とも連携し、その子の状態やご家族のご希望に合わせた治療方針をご提案しています。
「大きな病院へ行くべきか迷っている」「まず何から調べればよいか分からない」といった場合も、安心してご相談ください。
まとめ
犬や猫のしこりは、必ずしも“がん”とは限りません。しかし、見た目だけで良性・悪性を判断するのは難しく、適切に見極めるには検査が必要になる場合があります。
また、腫瘍は早い段階で発見できると、治療の選択肢が広がる可能性があります。そのため、日頃からスキンシップを通して体の変化に気づく姿勢が大切です。
「少し気になる」「念のため診てもらいたい」という段階で受診いただくことで、安心につながるケースも少なくありません。
なお、当院ではしこりや腫瘍に関するご相談にも丁寧に対応し、必要に応じて専門施設とも連携しながら、その子に合った治療方針を一緒に考えてまいります。不安な変化がありましたら、お気軽にご相談ください。
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監修:米田 昂史(院長・獣医師)
米田 昂史(院長・獣医師)
<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。
<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから
<ひとこと>
言葉を話せない動物たちそれぞれの個性を大切にし、飼い主様と相談しながら最善の治療を提案いたします。「気軽に立ち寄れる動物病院」であり続けるために、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
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