2026.04.23 犬や猫の口臭・よだれが増えたら要注意?|歯周病・口腔トラブルと受診の目安
「最近、愛犬や愛猫の口臭が強くなった気がする」「以前よりよだれが増えたかもしれない」と感じたことはありませんか。これらは日常の中でよく見られる変化のため、つい様子を見てしまう飼い主様もいらっしゃいます。
しかし、こうした変化の背景には、歯肉炎や歯周病などの口腔トラブルが隠れている場合があります。また、口の中は外から確認しづらく、気づいたときには症状が進行しているケースも少なくありません。
そこで今回は、犬や猫の口臭・よだれが増える原因、放置するリスク、診断や治療の流れなどについて解説します。

■目次
1.口臭・よだれは“よくあること”で片付けていい?
2.こんな変化は受診のサイン
3.考えられる主な原因
4.放置するとどうなる?口腔トラブルと全身への影響
5.動物病院で行う診断・治療の流れ
6.まとめ
口臭・よだれは“よくあること”で片付けていい?
犬や猫の口臭は「年齢」や「体質によるもの」と捉えられがちですが、実際には歯垢や歯石の蓄積によって起こる歯肉炎や歯周病が関係しているケースが多く見られます。
特に歯周病は身近な病気であり、3歳以上の犬や猫の約8割が罹患しているともいわれています。このように多くの犬や猫で見られる疾患であり、初期の歯肉炎から歯周病へと進行するにつれて、口臭が強くなったり、よだれが増えたりする傾向があります。
一見するとこれらの症状は、軽い変化に思えるかもしれませんが、口の中では炎症が徐々に広がっている可能性もあります。そのため、「よくある変化」として見過ごさず、日頃から注意深く口の中の様子を観察することが大切です。
こんな変化は受診のサイン
愛犬や愛猫に以下のような様子が見られる場合は、口腔内で何らかのトラブルが起きている可能性があります。
・急に口臭が強くなり、腐ったようなにおいがする
・よだれの量が増えている
・フードを食べこぼしたり、片側だけで噛んだりする
・顔や口元を触られるのを嫌がる、怒る
・口の周りを気にしてこする仕草が見られる
・歯ぐきの赤みや腫れ、出血が表れている
これらの変化が一つでも見られる場合、見た目には元気そうであっても安心とは言い切れません。違和感に気づいた段階で早めに受診することで、症状の進行を防ぎ、負担の少ない治療につながる可能性があります。
考えられる主な原因
口臭やよだれの増加には、以下のようにさまざまな原因が関係しています。
◆歯周病・歯肉炎
犬や猫の口腔トラブルの中でも最も多く見られる原因です。歯垢や歯石が蓄積することで歯ぐきに炎症が起こり、進行すると強い口臭や出血、歯のぐらつきなどがみられることがあります。
◆口内炎
特に猫で多く見られる疾患です。炎症による強い痛みが生じるため、食事がしづらくなったり、食欲が低下したりするケースもあります。
◆口腔内腫瘍
口腔内に腫瘍ができると、出血やよだれの増加、口臭の悪化などの変化がみられる場合があります。犬では悪性黒色腫、猫では扁平上皮癌が多いとされており、早期の発見と対応が重要です。
◆異物や口のケガ
骨やおもちゃなどによって口の中が傷つくと、そこから炎症が起こることがあります。傷の痛みによって食べ方が変わったり、よだれが増えたりすることもあるため、普段との違いに気づくことが大切です。
◆内臓疾患が背景にあるケース
口臭の変化は、口の中のトラブルだけでなく、腎臓や肝臓などの内臓の病気が関係している場合もあります。普段とは異なるにおいが続くときには、全身の状態を含めた確認が必要になることもあります。
このように、単なる口の問題だけでなく、体の状態が関係しているケースもあるため、原因を見極めることが重要です。
放置するとどうなる?口腔トラブルと全身への影響
口臭やよだれの変化は、一見すると緊急性が低いように感じるかもしれません。しかし、そのまま放置してしまうと、犬や猫の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
例えば歯周病が進行すると、歯を支えるあごの骨が溶けたり、歯がぐらついたり抜けたりすることがあります。さらに炎症が続くことで痛みが強くなり、食欲が低下したり元気がなくなったりする場合もあります。
また、口の中の細菌が血流に入り込むことで、心臓や腎臓、肝臓などに影響を及ぼす可能性も指摘されています。このように、口腔トラブルは単に歯だけの問題ではなく、全身の健康にも関わる重要な疾患です。
実際に当院で診察したケースでは、重度の口内炎により強い痛みが生じ、食事が取れなくなっていた子がいました。その後、全抜歯の処置を行うことで痛みが軽減し、再び食事ができるようになり、元気に過ごせるようになりました。このように、口の中の状態は生活の質に大きく関わるため、早めの対応が大切です。
動物病院で行う診断・治療の流れ
動物病院では、まず飼い主様から普段の様子について詳しくお話を伺い、そのうえで口の中の状態を丁寧に確認していきます。
その後、以下のように原因に応じた治療方針を検討していきます。
<歯周病・歯肉炎の場合>
視診や触診に加え、必要に応じてレントゲン検査を行い、歯の根や骨の状態まで確認します。歯垢や歯石の蓄積によって炎症が起きている場合には、歯石除去や抜歯などの歯科処置を行います。こうした処置は、安全性を確保しながら痛みを軽減するため、通常は全身麻酔下で実施します。
<口内炎の場合>
口腔内の視診や症状の経過をもとに診断を行い、必要に応じて感染症の検査などを追加することもあります。炎症による痛みが強い場合には、内科的な治療で炎症や痛みを抑えたり、状態に応じて処置を検討したりします。
<口腔内腫瘍の場合>
視診や触診に加え、細胞診や組織検査、画像検査などを組み合わせて診断を進めます。なお、検査内容によっては、安全に実施するために全身麻酔や鎮静が必要となる場合もあります。
また、診断結果に応じて外科手術や追加治療を検討します。
<異物や口のケガがある場合>
口腔内の視診や触診によって異物の有無や傷の状態を確認し、必要に応じて鎮静下で詳しく観察することもあります。異物が刺さっている場合や傷が原因となっている場合には、異物の除去や創部の処置を行い、炎症の改善を図ります。
<内臓疾患が背景にある場合>
血液検査や画像検査などを行い、腎臓や肝臓など全身の状態を確認します。異常が認められた場合には、その基礎疾患に対する治療を進めていきます。
このように、口臭やよだれの背景にはさまざまな要因が関わっているため、まずは原因をしっかりと見極めることが重要です。そのうえで、原因や現在の状態、その子の体調に合わせて、適切な治療方法を選択していくことが大切になります。
また、一般的に歯石除去や抜歯などといった処置は、安全性や痛みへの配慮から全身麻酔下で行うことが基本とされています。一方で、高齢であったり持病があったりする場合には、麻酔のリスクが高くなることもあります。
当院は、歯が大きくぐらついており早急な処置が必要である一方、麻酔のリスクが高いと判断された犬や猫に対して、無麻酔で抜歯の処置を行ったケースもあります。
このように、すべての症例で同じ対応ができるわけではありませんが、その子にとってどのような選択が可能かを一緒に考え、最善の処置を選択していくことが大切です。「麻酔が難しいから処置ができない」と判断する前に、まずは一度ご相談ください。
犬の歯石取り(スケーリング)についてより詳しく知りたい方はこちら
まとめ
犬や猫の口臭が強くなったり、よだれが増えたりする変化は、歯肉炎や歯周病などの口腔トラブルのサインとして現れることがあります。一見すると軽い変化に思える場合でも、口の中では炎症が進んでいる可能性があるため、見過ごさないことが大切です。
また、口腔トラブルは痛みや食欲低下につながるだけでなく、全身の健康に影響を及ぼすこともあります。そのため、早い段階で受診することで、治療の選択肢が広がり、犬や猫への負担を抑えられる可能性があります。
さらに、日頃からデンタルケアを取り入れたり、定期的に健康診断を受けたりすることも、予防の面で重要です。少しでも気になる変化が見られた場合には、無理に様子を見続けるのではなく、早めにご相談いただくことをおすすめします。
当院では愛犬や愛猫の状態や生活背景に合わせて、無理のない治療やケア方法をご提案しております。口臭やよだれの変化に気づいた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
犬と猫の健康診断の重要性についてより詳しく知りたい方はこちら
監修:米田 昂史(院長・獣医師)
米田 昂史(院長・獣医師)
<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。
<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから
<ひとこと>
言葉を話せない動物たちそれぞれの個性を大切にし、飼い主様と相談しながら最善の治療を提案いたします。「気軽に立ち寄れる動物病院」であり続けるために、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
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