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2026.04.10 犬や猫のワクチンは本当に必要?|種類・時期・副作用を獣医師が解説

2月から3月にかけて、動物病院から「ワクチンのご案内」が届くことも多いと思います。「毎年打っているけれど、本当に必要なのかな?」「副作用があったらどうしよう…」と、愛犬や愛猫の健康を想うからこそ、迷いや不安を感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?

犬や猫のワクチンは主に「狂犬病ワクチン」と「混合ワクチン」などがあります。
また、狂犬病ワクチンは、法律により年1回の接種が義務付けられています。

混合ワクチンは法律で定められた“義務”ではありませんが、防げる病気を未然に防ぐための重要な“手段”の1つです。救急医療を経験してきた獣医師としても、基本的には接種をお勧めしています。

今回は、犬や猫のワクチンの本質的な役割から、副作用への備え、そして当院が大切にしているオーダーメイドの予防計画(種類や時期)などについてご紹介します。

■目次
1なぜ春にワクチンが必要なの?
2.救急の現場で見てきた「ワクチンを打っていれば防げたかもしれない命」
3.【犬・猫別】混合ワクチンの種類と選び方|当院のワクチン接種の考え方
4.副作用が心配な飼い主様へ|正しく知って、正しく備える
5.狂犬病ワクチン・健康診断と一緒に考える「負担を減らす予防」
6.まとめ

 

なぜ春にワクチンが必要なの?

春は暖かくなり、お散歩やお出かけの機会が増えたり、他の動物と接触する機会が多くなったりする季節です。また、季節の変わり目で気温や天気が変化しやすく、体調を崩しやすくなります。こうしたタイミングで予防を見直すのは、愛犬や愛猫の健康を守るためにはとても大切なことです。

さらに春は、動物病院での予防シーズンが本格的に始まる時期でもあります。狂犬病予防接種やフィラリア予防とあわせて来院されることが多く、ワクチン接種のスケジュールを整えやすいタイミングでもあります。予防をまとめて見直すことで、接種の間隔や体調管理を計画的に行いやすくなります。

また、子犬や子猫を迎えるご家庭が増える時期でもあり、感染症の持ち込みや接触機会が増える傾向があります。そのため、あらかじめ免疫を整えておくことは、感染リスクを下げるうえでも重要です。

特に混合ワクチンは、重症化しやすい感染症から愛犬や愛猫を守る役割があります。春のタイミングで適切に接種しておくことで、その後の生活をより安心して過ごしやすくなります。

 

救急の現場で見てきた「ワクチンを打っていれば防げたかもしれない命」

救急の現場では、ワクチン未接種のために感染症が重症化し、危険な状態で来院する症例も少なくありませんでした。

獣医師として全力を尽くしても、残念ながら救うことができなかった子もいました。「ワクチンを打っていれば、防げたかもしれないのに…」と悔しさが残った経験もあります。

ワクチンは、何かが起きてからの医療ではなく、起こさないために必要な医療です。救急現場の現状を知っているからこそ、穏やかな日常を守るための予防の大切さを丁寧にお伝えしたいと考えています。

 

【犬・猫別】混合ワクチンの種類と選び方|当院のワクチン接種の考え方

犬と猫ではかかりやすい病気や生活環境が異なるため、それぞれに適した種類を選ぶことが大切です。

 

<犬の場合>

犬の混合ワクチンは、5種・7種・8種・10種などがあり、含まれる抗原の種類が異なります。愛犬の生活環境に合わせて、適した種類を選ぶことが大切です。

 

●5種混合
犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)、犬アデノウイルス2型感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症

●6種混合
5種+犬コロナウイルス感染症

●7種混合
5種+レプトスピラ2種

●8種混合
5種+犬コロナウイルス+レプトスピラ2種

●10種混合
5種+犬コロナウイルス+レプトスピラ4種(カニコーラ型・イクテロヘモラジー型・グリッポチフォーサ型・ポモナ型)

また、特に注意したい感染症の一つにレプトスピラ症があります。この病気はネズミなどの野生動物の尿を介して、水辺や土壌から感染が広がります。昨年、藤沢市でも発生が確認されており、こうした感染症のリスクが身近にあることを再認識された飼い主様もいらっしゃるかもしれません。発熱や元気消失、嘔吐、腎臓や肝臓への影響など重い症状につながることもあるため、生活環境によっては注意が必要です。

 

<選ぶ基準の目安>

・室内飼いで、外に出る機会があまりない場合:5種または6種
・河川敷や山などの自然や野生動物との接触がある場合:7種または8種

なお、レプトスピラのうちグリッポチフォーサ型やポモナ型は、国内での報告は多くありません。それでも心配であれば10種を選択しましょう。

 

<猫の場合>

猫の混合ワクチンは、主に3種・4種・5種に分かれています。愛猫の生活環境に合わせて、適した種類を選びましょう。

●3種混合
猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)

●4種混合
3種+猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

●5種混合
3種+猫白血病ウイルス感染症+クラミジア感染症

また、特に注意したい感染症の一つに猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)があります。この病気は、感染した猫の便や吐物に含まれるウイルスが口や鼻から体内に入ることで感染し、環境中でも長期間生存するため、直接接触がなくても感染が広がることがあります。

発熱や嘔吐、下痢、食欲不振などの症状がみられ、白血球の減少によって免疫力が大きく低下することが特徴です。特に子猫では重症化しやすく、急速に状態が悪化する場合もあるため、注意が必要です。

 

<選ぶ基準の目安>

・完全室内飼育で、ほかの猫との接触がない場合:3種
・外に出る機会がある場合、保護猫活動や多頭飼育などで猫同士の接触がある場合:4種または5種

なお、猫の場合は動物病院への来院自体がストレスになることが多いので、当院では比較的混み合う春の狂犬病予防接種シーズンを避け、落ち着いた時期での接種もご提案しています。

また、当院のワクチン接種には、以下のようなこだわりがあります。

 

<当院のワクチン接種の考え方>

基本的には接種をお勧めしていますが、持病がある場合は、飼い主様ともご相談したうえで実施の可否を判断しています。また、体調がすぐれない場合はスケジュールを調整するなど、柔軟に対応しています。

また、当院ではワクチン接種の必要性を判断する方法の一つとして、抗体価検査を実施しております。この検査では、現在どの程度の免疫が維持されているかを把握することで、接種が必要かどうかを検討することが可能です。

このような検査結果に加え、年齢や生活環境(外出の有無、多頭飼育など)も踏まえながら、その子にあった接種プランをご提案しています。毎年同じ内容を機械的に接種するのではなく、年齢や体調や生活スタイルに合わせて見直していくことが大切です。

 

副作用が心配な飼い主様へ|正しく知って、正しく備える

ワクチンは副作用が少ないといわれていますが、ゼロではありません。接種後に以下のような反応が起こることもあります。

 

<一般的にみられる軽度の反応>

一時的に元気がなくなる、食欲が低下する、接種した部位が痛い、といった反応です。発生頻度は少なく、ほとんどの場合1日程度で気にならなくなり、それほど問題になることはありません。

 

<急性アレルギー反応>

ムーンフェイス(顔がパンパンに腫れる)、アナフィラキシーショック(急激な血圧低下や嘔吐)などが起こります。非常にまれですが、症状が重篤で緊急性が高いため、速やかに動物病院に連絡してください。

 

なお、当院の院長は救急医療を経験しているため、万が一のアレルギー性反応に対しても、迅速に対応できる体制を整えています。また、その後のアフターフォローについても細やかに対応しています。

 

狂犬病ワクチン・健康診断と一緒に考える「負担を減らす予防」

4月は狂犬病予防接種のシーズンでもあります。鎌倉市や隣接する藤沢市では集団接種もありますが、当院では健康チェックも兼ねて院内接種も対応しています。ただし、混合ワクチンとの同時接種はできないため、スケジュールをずらしてご来院ください。

また、ワクチン接種のタイミングで血液を採取し、健康診断(血液検査)を同時に行うことは、来院する回数を最小限にできるメリットがあります。そのため、動物病院が苦手な子、あるいはさまざまな理由で来院が難しい子には特にお勧めです。

当院で実施している健康診断については、こちらの記事もご参照ください。一度の来院で全身をチェックすることは、犬や猫への負担を減らす賢い選択といえます。

犬と猫の健康診断の重要性についてより詳しく知りたい方はこちら

 

まとめ

ワクチンに対して不安を感じるのは、決して珍しいことではありません。正解は1つではなく、その子に寄り添った予防策を飼い主様と獣医師が一緒に考え、組み立てることが大切です。

「どの種類にすればいいのかわからない…」「いつ打てばいいの?」など、ご不明なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

直接ご来院いただいても、お電話でご連絡いただいても、どちらでも丁寧にご対応させていただきます。当院では来院予約は不要ですので、お時間があるときにお越しください。

 

監修:米田 昂史(院長・獣医師)

 

米田 昂史(院長・獣医師)

<経歴・資格>
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北海道札幌市や東京都大田区の動物病院、さらに夜間救急動物病院目黒で勤務。心肺蘇生実技講習(RECOVER BLS & ALS Rescuer course)を修了し、救急医療にも精通している。

<著書>
『犬と猫の救急道場』(どうぶつとひと出版)
▶著書の詳細はこちらから

<ひとこと>
言葉を話せない動物たちそれぞれの個性を大切にし、飼い主様と相談しながら最善の治療を提案いたします。「気軽に立ち寄れる動物病院」であり続けるために、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。

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