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2025.10.03 犬の食材安全ガイド|危険食材の見分け方と誤食時の最新内視鏡治療による迅速対応

「これは食べても大丈夫?」「ほんの少しなら問題ない?」と不安に思ったことはありませんか。犬と暮らす飼い主様であれば、一度は与えてよい食べ物と避けるべき食べ物について悩んだ経験があるのではないでしょうか。

犬の誤食は、日常生活の中で誰にでも起こり得るとても身近なトラブルです。中には命にかかわる深刻なケースへと発展してしまうものもあります。そのため、普段から犬にとって安全な食材を見極めること、さらに万が一誤食が起きた際に迅速かつ適切に対応できるよう備えておくことが大切です。

今回は犬にとって安全な食材や危険な食材の判断基準、誤食時の対処法、内視鏡による除去治療などについて解説します。

■目次
1.犬に与えてよい食材と避けるべき食材|危険度別分類
2.危険食材と中毒症状の関係
3.誤食が疑われたときの正しい初期対応
4.内視鏡治療や胃洗浄による処置
5.内視鏡が使えない場合とその対応
6.日常でできる誤食予防と安全な食習慣
7.まとめ|毎日の安心と、もしもの時の備えを

 

犬に与えてよい食材と避けるべき食材|危険度別分類

<基本的に安全な食材>

・加熱した鶏肉や白身魚
・茹でたかぼちゃ、さつまいも
・無糖ヨーグルト

これらの食材は多くの犬にとって比較的安全とされています。ただし、味付けをしない、脂肪分を控える、適量を守るといった基本的な注意は必要です。特に体の小さな犬や消化器系が弱い犬には、量や調理法に注意を払いましょう。

 

<経過観察が必要な食材>

・トマトの青い部分
・乳製品(少量)
・脂肪分の多い肉類

これらの食材は、犬によって下痢や嘔吐などの消化不良が見られることがあります。そのため、与えた後はしっかりと様子を観察し、異変があればすぐに動物病院に相談してください。

 

<緊急性が高い食材>

・チョコレート
・玉ねぎや長ネギ類
・ぶどう・レーズン
・キシリトール
・アボカド
・鶏や牛の骨
・お茶
・アルコール
・マカデミアンナッツ

これらの食材は、少量であっても犬にとって重大な中毒症状や消化管へのダメージを引き起こす可能性があります。特に小型犬では重篤な症状に発展するリスクが高く、すぐに動物病院を受診する必要があります。

 

また、犬種や体重、体調によっても影響に違いが出るため、「うちの子は大丈夫」と思い込まず、正しい知識をもって対応することが大切です。

 

危険食材と中毒症状の関係

危険な食材には犬の体に有害な成分が含まれており、種類によって引き起こされる中毒症状も異なります。代表的な食材と、それによって起こり得る症状は以下の通りです。

 

<チョコレート>

カカオに含まれるメチルキサンチン類(テオブロミンやカフェイン)などの成分が犬の神経系や心臓に悪影響を及ぼします。摂取すると、震えや不整脈、興奮、けいれんなどが見られることがあります。さらに、チョコレートには脂質も多く含まれているため、摂取後すぐの症状だけでなく、遅れて膵炎を引き起こす危険もあります。膵炎は嘔吐や下痢、食欲不振などを伴い重症化することもあるため、注意が必要です。

 

<玉ねぎ・長ネギ・にんにくなどのネギ類>

赤血球を壊す「有機硫化化合物」が含まれており、貧血や血尿、元気消失といった症状が現れる場合があります。加熱しても無毒にはなりません。

 

<ぶどう・レーズン>

摂取後に急性腎不全を引き起こす可能性があり、嘔吐や尿量の減少、脱水、元気消失などが見られることがあります。

 

<キシリトール>

人間用のガムやお菓子に含まれる人工甘味料により、インスリン分泌が急激に促進され、低血糖や肝機能障害を招く恐れがあります。また、摂取後数十分でぐったりすることもあります。

 

<アボカド>

「ペルシン」という成分が心筋や消化器に影響を与える可能性があり、嘔吐や下痢、呼吸困難を起こすことがあります。

 

<鶏や牛の骨>

調理済みの鶏や牛の骨は硬く、噛むと鋭く割れるため消化管に刺さる危険があります。ほかにも、口腔内の損傷や食道や胃腸の穿孔、便秘や腸閉塞を引き起こすこともあります。特に加熱された骨はもろく割れやすいため注意が必要です。ただし、生骨であっても細菌感染や消化不良のリスクがあるため、与えない方が安全です。

 

<お茶>

お茶に含まれるカフェインは犬にとって有害で、少量でも中毒症状を引き起こすことがあります。落ち着きがなくなる、呼吸が速くなる、嘔吐や下痢、けいれんといった症状が現れることがあります。

 

<アルコール>

犬は人間よりもアルコールを分解する能力が低く、摂取すると少量でも中毒を起こします。嘔吐やふらつき、体温低下、意識障害、昏睡に至ることもあり、命に関わる危険があります。

 

<マカデミアンナッツ>

中毒の仕組みははっきり解明されていませんが、摂取後に嘔吐や筋力の低下、ふらつき、震えなどが数時間以内に現れることがあります。重症の場合は高熱や歩行困難になることもあります。

 

<人間用の薬>

解熱鎮痛薬や抗うつ薬など、人間にとって安全な薬でも犬には強い毒性を示すものがあります。少量でも中毒を起こすことがあり、胃腸障害や出血、神経症状、肝障害など症状は薬の種類によって異なります。そのため、誤って口にした場合はすぐに動物病院を受診してください。

 

これらの症状は、食べてすぐに出るとは限らず、数時間から数日後に現れることもあります。見た目が元気そうでも「今は大丈夫」と判断せず、注意深く様子を観察することが大切です。

 

誤食が疑われたときの正しい初期対応

愛犬が危険な食材を誤って口にした可能性がある場合、自己判断で吐かせたり、そのまま放置したりするのはとても危険です。誤った処置は症状を悪化させたり、新たなリスクを招いたりする恐れがあります。

まずは、できるだけ早く動物病院に連絡し、以下の情報を正確に伝えてください。

✓食べたもの
✓推定の摂取量
✓食べた時間
✓現在の症状

なお、動物病院で行う催吐処置(薬を使って吐かせる処置)は、誤食からあまり時間が経っていない場合に有効です。基本的には、摂取直後であり、石油製品や強アルカリ・強酸などの腐食性物質、鋭利な異物でない場合に催吐処置を第一選択とします。当院では、筋肉注射タイプのアポモルヒネを用いて催吐処置を行っています。

一方で、摂取から4時間以上経過していると効果が十分に得られないことがあり、さらに内容物がすでに小腸へ移動している場合には、催吐処置や内視鏡での除去は困難になります。そのため、「いつ食べたのか」を正確に伝えることが、診断や治療方法を決める上でとても重要です。

 

内視鏡治療や胃洗浄による処置

与えてはいけない食材を誤食した場合、基本的には上記のような催吐処置を行います。ただし、大きめのおもちゃや食べ物などを飲み込んだり、毒性のあるものを摂取したりした場合は、以下の方法で治療が行われます。

 

<内視鏡治療>

食べ物が喉や胃に詰まったり、大きめのおもちゃや布片などを飲み込んだりした場合、全身麻酔下で内視鏡治療を行います。内視鏡を使用することで、お腹を切らずに異物を取り出せるため、犬の身体への負担を軽減することができます。
なお、内視鏡治療が検討される主な条件としては、以下のようなケースです。

・摂取からあまり時間が経過していない場合
・異物が胃内にとどまっている場合
・異物の大きさが小型〜中型程度の場合

異物の大きさは犬の体格によっても異なりますが、数センチ以上の硬い物や鋭利な物は腸閉塞や穿孔のリスクがあるため、早急な処置が欠かせません。

また、当院には高精度の内視鏡設備を完備しており、救急医療の現場で培った経験を活かして、迅速かつ安全な処置を行っています。

当院の内視鏡検査機器

 

<胃洗浄>

人の薬や有毒植物などの毒性物質を誤って摂取した場合には、胃洗浄という処置が選択されることがあります。胃洗浄とは、全身麻酔下で胃の中に管を挿入し、水や生理食塩水を流し入れて胃の内容物を洗い流す方法です。

この処置によって、胃に残っている毒素を可能な限り体外へ排出することができ、中毒症状の進行を防ぐ効果が期待できます。

これらの処置を行った後、回復が順調であれば短期入院や日帰りで帰宅できることもあります。
ただし、摂取したものが強い毒性を持っている場合には、症状の経過を慎重に観察する必要があるため、数日間の入院が必要になることもあります。

 

内視鏡が使えない場合とその対応

内視鏡治療は、すべての誤食に対応できるわけではありません。以下のような場合には、開腹手術を検討する必要があります。

・異物が大きすぎて内視鏡で取り出せない場合
・異物により消化管穿孔(胃や腸に穴が開くこと)の疑いがある場合
・摂取から長時間が経過し、異物が腸まで移動している場合

ただし、このような重症例に対しても、当院では迅速に二次診療施設と連携し、犬の状態に応じた最適な医療をご提供できる体制を整えております。

なにか分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

日常でできる誤食予防と安全な食習慣

犬の誤食事故を防ぐためには、日々の生活の中での工夫がとても重要です。以下のような対策を習慣にすることで、リスクを大きく減らすことができます。

・危険な食材や誤食の恐れがある物は、犬の届かない場所に保管する
・食事やおやつを与える際は、調理法、サイズ、量に注意し、消化しやすい状態に整える
・家族全員で「与えてよい食材・与えてはいけない食材」の情報を共有し、ルールを統一する
・拾い食いなどのリスクを減らすために、日頃からしつけを行う

これらの対策を徹底することで、誤食を未然に防ぐだけでなく、犬の健康を守ることにもつながります。

 

まとめ|毎日の安心と、もしもの時の備えを

犬の誤食は、日常生活の中で起こりやすい非常に身近な事故です。しかし、ちょっとした工夫や正しい知識を積み重ねることで、多くの場合は予防することができます。

それでも万が一誤食が起きてしまったときには、自己判断せず、できるだけ早めに動物病院に連絡してください。当院では高精度の内視鏡を用いた迅速で安全な処置を行える体制を整えておりますので、安心してご相談いただけます。

犬の健康と命を守るために、私たちが全力でサポートいたします。

 

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