2025.08.01 撫でていたらしこりを発見?|愛犬や愛猫の腫瘍と向き合うために
愛犬や愛猫と日々スキンシップをとる中で、「いつも通り撫でていたら、手にふと違和感があった」「シャンプー中に、しこりのようなものを見つけた」といったきっかけで当院を受診される飼い主様は少なくありません。
犬や猫のしこりは、被毛に隠れて気づきにくく、発見が遅れることもあります。そのため、日頃から意識的に全身に触れる習慣をつけておくことが、早期発見につながります。
今回は犬や猫に見られるしこりについて、原因やセルフチェックの方法、受診のタイミングなどをご紹介します。
■目次
1.しこりの基本とセルフチェック方法
2.受診の判断ポイントと対応
3.診断方法・治療方法
4.よくある質問
5.まとめ
しこりの基本とセルフチェック方法
犬や猫の皮膚にできるしこりには、以下のように良性のものもあれば、悪性(腫瘍性)のものもあります。
<良性腫瘍の一例>
・脂肪腫:脂肪細胞が増殖してできるやわらかいしこりで、触るとプニプニしています。
・乳頭腫:パピローマウイルス感染や加齢が原因でできるイボ状のしこりで、カリフラワーのような形をしています。
<悪性腫瘍の一例>
■犬に多い悪性腫瘍
・肥満細胞腫:免疫に関わる細胞ががん化したもので、パグやラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、シュナウザーなどでよく見られます。
・リンパ腫:白血球の一種であるリンパ球ががん化したもので、全身のさまざまな部位に発生します。
・軟部組織肉腫:筋肉や脂肪、神経などから発生するがんで、中〜大型犬でよく見られます。
■猫に多い悪性腫瘍
・リンパ腫:特に猫白血病ウイルスに感染している猫で発症リスクが高く、進行が早いことがあります。
・扁平上皮癌:皮膚の表面にある細胞ががん化したもので、紫外線の影響を受けやすい白猫や毛色に白が混ざっている猫で多く見られます。
・肥満細胞腫:皮膚や内臓にできることがあり、皮膚にしこりとして現れるタイプは比較的見つけやすい一方、脾臓や腸にできるタイプは進行するまで気づきにくいことがあります。
<日頃からできるチェックと記録の工夫>
しこりを早期に発見するためには、日頃から愛犬や愛猫の体に触れる習慣をつけておくことが大切です。頭からしっぽの先まで手で優しく触れて、普段と違う感触がないか確認しましょう。
少しでも違和感があればスマートフォンで写真を撮って記録を残しましょう。その際、物差しやコインなどと一緒に撮ると、大きさの変化を比較しやすくなります。
また、腫瘍は加齢に伴い発生リスクが高まる傾向にあるため、特に5歳を過ぎた犬や猫では、より注意深い観察が必要です。
受診の判断ポイントと対応
しこりを見つけたとき、「すぐに病院へ行くべきかどうか」悩まれる方も多いと思います。以下を参考に、受診のタイミングを見極めましょう。
<比較的緊急性が低いケース>
・1〜2週間たってもサイズが変わらない
・表面がつるんとしており、指で押すと動く
これらは良性の可能性がありますが、念のため1か月以内には動物病院で検査を受けましょう。
<緊急性が高いケース>
・数日〜1週間で急激に大きくなっている
・表面がデコボコしていて、固く動かない
・出血している
・痛がる様子がある
このような場合は悪性腫瘍の可能性があるため、すぐに動物病院を受診してください。
また、受診までの間はしこりを舐めないようエリザベスカラーを使用したり、患部を清潔に保ったりすることも大切です。記録した写真や発見日、しこりの変化などをまとめておくと、診察がよりスムーズになります。
診断方法・治療方法
診断では、まず問診と身体検査を行い、次に細胞診と呼ばれる方法でしこりの性状を確認します。これは、しこりに細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
この検査で良性の可能性が高いと判断された場合は、経過観察として定期的なチェックで様子を見ます。一方、悪性が疑われる場合には、基本的には手術による摘出が推奨されます。
当院では、CO₂レーザーを用いた手術を行っており、これにより出血や術後の腫れを抑えつつ、できるだけ犬や猫への負担を軽減することが可能です。摘出したしこりは病理組織検査に提出され、そこで初めて正確な診断が下されます。
治療方針は、腫瘍の種類や進行度によって異なります。必要に応じて、手術に加えて抗がん剤治療や凍結療法などを行うケースもあります。
いずれにしても、早期発見・早期治療がその後の経過に大きく影響するため、気になるしこりを見つけた際は、早めに動物病院を受診してください。
よくある質問
Q:しこりは、ある程度大きくならないと気づけないのでは?
A:確かに、小さいしこりは気づきにくいこともあります。しかし当院では、日常の診察の中でも触診にしっかりと時間をかけ、丁寧にチェックしています。定期的にご来院いただくことで、早期発見につながることが多くあります。
Q:腫れとしこりの違いは明確に判断できる?
A:一見して明らかな場合もありますが、多くは見た目や触った感触だけでは判断がつきません。正確な診断のためには、検査を重ねて慎重に見極める必要があります。
まとめ
「しこり」とひとことで言っても、その原因や性質はさまざまであり、中には命に関わる病気が隠れていることもあります。外見だけでは良性か悪性かを見分けることは難しいため、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。
また、日頃から愛犬や愛猫の体に触れる習慣をつけ、異変にいち早く気づけるよう心がけましょう。しこりを見つけた際には、大きさや場所を記録しておいたり、スマートフォンで写真を撮っておくのも診察時に役立ちます。
当院では、飼い主様とともに犬や猫の健康を守るパートナーとして、どんな小さな不安にも丁寧に対応いたします。しこりに限らず、気になることがありましたらいつでもご相談ください。
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