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2025.06.19 犬や猫の呼吸がおかしい|循環器専門医による診療を鎌倉市常盤で

愛犬や愛猫の「呼吸がいつもより速い気がする」「呼吸音がゼーゼーしている」といった様子を見て、不安になったことはありませんか?これらの症状は呼吸困難を引き起こしている可能性があります。

犬や猫が呼吸困難に陥る背景には、心臓病などの循環器疾患が隠れているケースが少なくありません。また、呼吸の異常は緊急性が高く、放置すると命に関わることもあるため、早急に適切な治療を行うことが重要です。

今回は、当院で毎週日曜日に診療を担当する循環器専門医が、犬や猫の呼吸の異常と循環器疾患の関係、見極めのポイント、そして緊急時の対応方法などをわかりやすく解説します。

■目次
1.循環器専門医の重要性
2.犬や猫の正常な呼吸とは?異常な呼吸の見分け方
3.犬や猫の呼吸困難を引き起こす主な循環器疾患
4.呼吸困難を示す犬や猫への応急処置
5.呼吸異常時の連絡と搬送のポイント
6.まとめ

 

循環器専門医の重要性

犬や猫の心臓病は、初期にはほとんど症状が出ないこともあります。しかし進行すると、呼吸困難や失神、突然死など、命に関わる深刻な症状を引き起こします。

また、呼吸器疾患との見分けが難しいケースも多く、正確な診断と適切な治療のためには専門的な知識と経験が必要です。

当院には、「日本獣医循環器学会」に所属する循環器専門医が在籍しており、豊富な症例経験と高い専門性を活かして診療にあたっています。

毎週日曜日に循環器専門医による診療を実施しており、犬や猫の健康を循環器の専門的視点からサポートしています。

 

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犬や猫の正常な呼吸とは?異常な呼吸の見分け方

まずは、以下の正常な呼吸について確認しておきましょう。

 

<安静時の呼吸数>

犬の場合:1分間に約20〜30回程
猫の場合:20〜40回程

 

<睡眠時の呼吸数>

犬の場合:1分間に約15〜25回程
猫の場合:15〜30回程

 

この基準を大きく上回っていたり、以下のような様子が見られたりする場合は、何らかの異常が起きている可能性があります。

・お腹に力を入れて呼吸している
・肩や胸が大きく上下している
・呼吸が浅く、早い
・口を開けて呼吸している
・「ゼーゼー」「グーグー」などの異音がある
・首を伸ばして呼吸している

このような症状は、心臓が原因の循環器疾患や、肺・気道が原因の呼吸器疾患のどちらでも見られることがあります。一般的に、循環器疾患では運動後や興奮時に症状が強くなり、呼吸器疾患では常に症状が出ていることが多いのが特徴です

しかし、飼い主様がこれらの違いを見分けるのは困難です。そのため、異常を感じた際には、スマートフォンなどで呼吸の様子を動画に記録しておくと、診察時に役立ちます。

 

犬や猫の呼吸困難を引き起こす主な循環器疾患

以下のような病気に罹ると、呼吸困難を引き起こす可能性があります。

 

■犬に多い循環器疾患
<僧帽弁閉鎖不全症>

犬に最もよく見られる心臓病で、僧帽弁の弁尖や弁装置における「粘液腫様変性」が原因で起こります。ほかにも、加齢に伴って発症することがあります。この病気は、心臓の弁がしっかり閉じなくなることで血液が逆流し、心臓に負担がかかるのが特徴です。初期には症状が見られないこともありますが、進行すると咳が出る、呼吸が速くなる、疲れやすくなるといった症状が現れ、最終的には呼吸困難や失神を引き起こすこともあります。

 

<肺高血圧症>

心臓から肺へ血液を送る「肺動脈」の血圧が高くなる病気です。初期は無症状のことが多く、進行すると咳が出る、すぐに疲れる、チアノーゼ(舌や歯ぐきなどが紫色っぽくなる)などが現れます。また、重度になると腹水がたまったり呼吸困難を起こしたりして、命に関わることもあります。

 

<動脈管開存症(PDA)>

先天性の心疾患で、本来であれば生後すぐに閉じるはずの血管(動脈管)が開いたままになってしまう病気です。初期には目立った症状が見られず、進行すると呼吸数の増加や咳、運動を嫌がるなどの症状が現れます。また、重症化すると呼吸困難を伴うことがあります。

 

■猫に多い循環器疾患
<肥大型心筋症>

猫で最も多く見られる心臓の病気です。初期には症状が現れにくいものの、悪化すると呼吸困難や肺水腫などの症状

が見られます。また、心臓がうまく働かなくなると血液循環が悪くなり、血栓が出来やすくなります。血栓が後ろ足に詰まると、激しい痛みとともに呼吸が速くなり、緊急性の高い状態になります

 

<不整脈>

不整脈とは、心臓の拍動が乱れる状態のことを指します。軽度であれば無症状のこともありますが、心臓から十分な血液を送り出せなくなると、ふらつきや失神、まれに呼吸が荒くなるなどの症状が現れることがあります。特に、心筋症などの心臓の病気を背景にした場合には、重篤化し突然死に至るケースもあるため注意が必要です。

 

■その他の要因

フレンチブルドッグやペルシャ猫などの短頭種は、生まれつき気道が狭く呼吸器の問題を抱えていることが多いため、特に注意が必要です。さらに、肥満や高齢といった要因も心肺機能への負担をかけ、疾患のリスクを高める要因となります。

 

呼吸困難を示す犬や猫への応急処置

犬や猫の呼吸困難が見られた場合、以下の手順で応急処置をしてください。

 

①まずは落ち着いて、興奮させないようにする

犬や猫がパニックになると、さらに呼吸が苦しくなってしまいます。声をかけたり、無理に動かしたりせず、静かに見守ってください。

 

②無理に抱き上げたり、姿勢を変えたりしない

犬や猫は自分で楽な姿勢をとろうとするため、抱き上げるなどの行動は避けましょう

 

③うつ伏せで顔が少し上がる姿勢を保つ

この姿勢が最も呼吸しやすいとされています。顎の下にタオルやクッションを入れて、呼吸が楽になるようサポートしましょう。

 

④すぐに動物病院へ連絡・受診する

これらはあくまでも応急処置です。薬を使ったり様子を見たりせず、早急に動物病院を受診してください。可能であれば循環器専門医がいる病院への受診をおすすめします。

 

⑤室温を調整する

室内が暑い場合は、エアコンなどを使って温度を下げてください。呼吸がしやすいように、空気の流れを整えることも大切です。

 

呼吸異常時の連絡と搬送のポイント

動物病院へ連絡する際には、以下の情報をあらかじめ整理しておくと診察がスムーズに進みます。

・呼吸異常が始まった時間
・1分間の呼吸数
・チアノーゼの有無(舌や歯茎の色)
・既往歴や持病の有無

また、病院へ向かう際には、犬や猫にできる限り負担をかけない抱き方を心がけましょう。仰向けの姿勢は避け、犬や猫の体を横向きにしたまま、片方の手で前足の付け根あたりを、もう片方の手で後ろ足の付け根あたりをやさしく支えましょう。できるだけ背骨が地面と平行になるよう意識して、体がぐらつかないよう、そっと移動させてください

特に心臓に疾患がある場合は、ちょっとした体勢の変化で状態が悪化することもあるため、注意しましょう。

 

まとめ

犬や猫の呼吸がおかしいと感じたとき、原因が呼吸器ではなく心臓にある可能性も考えられます。循環器疾患は命に関わるケースが多く、飼い主様の「いつもと違うかも」という気づきが早期発見と救命につながる大きな一歩になります。

しかし、正常な呼吸と異常な呼吸を見分けるのは簡単ではありません。判断に迷った場合はすぐに動物病院へご相談ください。

鎌倉市常盤にある当院では、毎週日曜日に一般診療に加えて循環器専門医による診療を行っています。専門的な視点から、呼吸異常や心臓の病気に対して的確な診療体制を整えています。不明点や疑問などありましたら、お気軽にご相談ください。

 

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